法皇訪問と南アメリカで宗教色の薄い国チリ〜変換期

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 初のラテンアメリカ出身の法皇として、大陸各国で歓迎されているフランシスコ法皇は、チリ訪問には他国と異なるミッションを抱えて来ている。そのミッションとは、重大な問題を抱える教会を助ける事で、聖職者による数多くの性的虐待問題など、ウルグアイと共に南米大陸で最もカトリック信者が少ないチリ社会のカトリック教会への不信感を払拭するというものである。

 

「私にとって今回の訪智は難しいものではない。ここで勉強した事があり、多くの友達がいる、チリの事は良く分かっている。」と、法皇はコメントを寄せた。

 

15日月曜日、バチェレ大統領が空港で法皇を出迎えた。3月に任期が終了する彼女にとって今回の法皇の訪智は、国民の支持率を回復する後ろ盾となる出来事である。2年前、支持率は過去最低の数値であったが、退任時期が近づき徐々に回復している。

法皇は、バチェレ大統領の任期中に訪智する事を承諾し、時期大統領右翼のセバスチャン・ピニェラ氏との会談には応じなかった。サンティアゴ大司教のリカルド・エサティは、チリカトリック教会が危機的状況であり、その大元の原因が聖職者による性的虐待を初めとする立場の乱用であることを認める発言を法皇到着前に行なった。

今回の訪智で最もデリケートなテーマは「性的虐待」であり、オソルノ市で起きたカラディマ神父による多数の児童への性的虐待事件で加害者の神父に関係が近いバロス神父をオソルノ市の司教として指名したのは他でもないフランシスコ法皇であった。よって、カラディマ神父の被害者児童の保護者達は法皇との会談を希望した。しかし、その会談は予定には組み込まれていない。

 

 

El papa Francisco este lunes.
パパモビルでサンティアゴ市内を巡る法皇

 

法皇到着に反対する過激派による5つの教会の破壊や、訪問に必要な費用を税金で賄う事に反対する人々の批判や妨害行為も多く発生した。このような出来事もあり、サンティアゴ市内の警備は厳重な姿勢で行われた。

 

チリ国民のカトリック離れ

 

チリ国民のカトリック離れは急激に進んでいる。ラテンアメリカの世論調査を行う Latinobarómetro, の最新の調査では、パラグアイ国民の89%がカトリック信者であり、メキシコ80%、コロンビアとペルー73%と高数値に反してチリはわずか44%に留まっている。

かといって、ブラジルや中米のようにプロテスタントと競争しているわけではなく、チリにおいてカトリック教会のライバルは「無宗教」である。チリ国民の38%が信仰を持たないと答えている。この値は大陸一であり、1995年以降、カトリック信者として宣言する人々の数は約30%減少した。フランシスコ法王誕生の地であるアルゼンチンでは、国民の21%が無宗教で66%がカトリック信者である。

 

「チリは世俗化された国であり、国民はヨーロッパを目指した。特にスペインを、そこでも同じような傾向が起きている。」

 

法皇はチリカトリック教会を救いに来ているが、法皇への信仰も問題となっている。法皇への平均点が1対10とするとパラグアイでは8.3なのに対し、チリでは5.1と最も価値を感じていない国となる。チリカトリック教会への信用も18カ国中最も低く、カラディマ事件後に崩壊している。

しかも、チリ社会はピノチェット元大統領の独裁政治後に政権を握っていたエリート階層から、ますます遠ざかっている。1987年、当時の法皇フアン・パブロII世が訪智した時と現在の法皇訪問の違いは顕著であり、フランシスコ法王とピノチェット元大統領の政権時に行方知れずとなっている人々の家族との面談が予定されている。

 

アルゼンチン上空を通過、しかし自国を避ける

 

アルゼンチン出身の法皇は、ブラジル、エクアドル、ボリビア、パラグアイ、キューバ、メキシコとコロンビアを既に訪問している。アルゼンチンと国境であるパラグアイを訪ねた際にも、アルゼンチンには立ち寄らなかった。アルゼンチン信者が大勢、法皇の姿を見るために国境を渡ってパラグアイを訪れた。

2013年に法皇として選ばれるために自国を去って以来、一度も戻っていない。ヨーロッパからチリに降り立つためには、アルゼンチン上空を通過する必要がある。フランシスコ法王が司祭を務めていた教会の現神父は、「我々の上空を通り過ぎて、他の場所に降り立つのはとても悲しい出来事」だとコメントした。

アルゼンチンのペロニズム運動に近い事で知られるフランシスコ法王は、アンチペロニズム派からは嫌われている。影響力の強い彼がアルゼンチン国内に戻った場合には、国民が更に分離する可能性を含んでおり、マクリ派は現大統領との衝突を避難している。

フランシスコ法王の側近は、「彼の存在が分離ではなく統一を意味するまで」法皇はアルゼンチンの地には戻らないと言う。その日がやって来るのは遠いと見られるため、訪智している法皇を一目見るために大勢のアルゼンチン人が国境を越えてやって来ている。

 

 

情報元:El papa Francisco llega a Chile para salvar a su iglesia, la más débil de la región

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